矯正治療で身体も歯も健康に

成人になって矯正治療を希望される場合、“見た目”だけでなく“一生自分の歯で美味しくご飯を食べたいから”が主な動機になっているようです。高齢化社会を迎え、長い人生をより良く生きることに高い関心が集まっています。噛むことによる脳への刺激が認知症の予防につながりますし、何より歳を経ていくにつれ美味しく食事を摂ることの重要性は増していきます。
人間の歯は28〜32本ほどで構成されています。食べ物を噛み切る・噛み砕くの一連の作業は、前歯や奥歯が役割分担をしてチームプレーで行っています。この歯は飛び出して咬めてなくてもイイ、などという歯は1本もないのです。もし噛み合うことに参加していない歯のフォローをその他の歯がして負担加重になれば、歯を失う原因になっていく可能性もあります。
ダメージが出る前に全ての歯でしっかり噛めるお口の環境を作る矯正治療は、「悪くなったら治す」のではなく「大切な歯を長持ちさせる」予防処置ともいえると思います。

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永久歯が少ない場合の治療

主に小学生の間に生え替わる永久歯。永久歯の本数は親不知と呼ばれている奥歯をのぞけば、上下14本ずつ計28本あります。しかしこの永久歯の本数が生まれつき少ない場合があります。これを“先天性欠如”と呼びます。原因の断定は難しいのですが、歯の中心から数えて2番目と5番目の歯に先天性欠如が起こりやすいと言われています。
欠損している部位の乳歯が長く抜けずに残っていたり、抜けてもなかなか次の大人の歯が生えてこなかったりしてレントゲン写真を撮って初めて知ることもあるようです。永久歯はどの歯もそれぞれ大切な役割がありますので、良い噛み合わせという視点から考えると無いままにしておくのは望ましいとは言えません。
無い歯を補う方法は色々あります。人工の歯を作る方法もありますし、矯正治療で全体の歯を動かしてバランスのとれた噛み合わせにすることもできます。2012年から6本以上の先天性欠如がある場合の矯正治療には保険が適用され、2014年からは歯科矯正用アンカースクリューも保険が適用されるようになり、治療方法の選択肢も増えました。治療スタートの時期や方法は患者さんの希望をふまえて計画していく事になります。

このレントゲンは下の歯の前歯2本(右下1番、左下1番)が先天性欠如です。

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歯並びとおしゃぶりの関係

おしゃぶりの使用には様々な理由が考えられます。子育てのスタイルの変化や、おしゃれなデザインの登場、口呼吸の防止になると考える人もいること、外出先で子供がぐずった時のお助けに、など子育てする上で何かと便利なのかもしれません。
しかし良い事ばかりではなく、ミルクを飲む量や時間の減少、中耳炎になりやすいことなど、マイナス面もわかっています。おしゃぶりが長期化すると今度はおしゃぶりの代わりに指を吸ったり、舌を突き出すのが癖になることも少なくありません。1歳半や3歳児検診に行くと、おしゃぶりや指しゃぶりを長く続けているお子さんは一目でわかるほど顎の骨やかみ合わせ・歯並びに大きく影響が出ています。
母子手帳の幼児期1歳頃のページには「歯並びやかみ合わせが悪くなることがあり自分で声を出す機会が減るためコミュニケーションが少なくなる」「おしゃぶりは早めに卒業しましょう、歯並びや口や唇の形が心配な場合は早めに歯科医師などの専門家に相談を」と記載もされています。
様々な面を持つおしゃぶりの使用ですが子供自身ではその使用を制限できません。かみ合わせへの悪い影響を心配される方は、離乳の時期をやめる目安にしてはいかがでしょうか。かみ合わせの悪化も早期に対応することががスムーズな改善につながります。
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保険適用の矯正治療(先天性疾患)

矯正治療で健康保険を適用できるのは前回のブログでお話した「外科矯正」ともう一つ、先天性疾患に起因する咬合異常の場合です。この先天性疾患とは、唇顎口蓋裂、第一第二鰓弓症候群、ダウン症候群、鎖骨頭蓋異骨症、クルーゾン症候群、トリチャーコリンズ症候群、ピエールロバン症候群、ラッセルシルバー症候群、ターナー症候群、ベックウィズウィーダーマン症候群、尖頭合指症 などです。(この他の先天性疾患を当院のHPにて紹介しております。詳しく知りたい方はHP(矯正歯科講座 【は】>保険適応)をご覧下さいませ。 →https://www.nonoyama-clinic.jp/) これらの疾患では顎の骨の発達具合が原因でかみ合わせや歯並びに問題が出てくるため保険での治療が認められています。矯正歯科は歯列を作っていく大事な役割を担うため、口腔外科や形成外科など他科と連携、協力しながら治療を進めていきます。育成更生医療機関で治療を受ける場合に、自己負担分も行政から補助されるシステムもあります。治療が長期に及ぶため家族の方の心配ありますが、保健所や全国的な患者さんの親の会でも様々な情報を得られますので相談されるのもよいでしょう。 

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保険適用の矯正治療(外科矯正)

矯正治療はほとんどの場合自由診療ですが、保険が適用されるケースもあります。今日はその中の「外科矯正治療」についてご紹介します。
成長を終えた大人の矯正治療(本格矯正)が対象ですが、噛み合わせのズレの程度がかなり大きいケース、主に①上または下あごが大きく出ている②あごがずれて顏がゆがんでいる(顔面の非対称)③骨格性の開咬(奥歯が当たって前歯が全く噛まない)などの治療で「顎口腔機能診断施設」の指定機関において健康保険が適用されます。この治療では歯とあごへアプローチできるため、顔がぐ〜っとナチュラルに変化します。大事なのはこれは顔を変えるための治療では決してなく、スムーズに噛める正しい位置に歯や顎を動かしたら顔貌も変化した、という順番なのです。
外科矯正は名前の通り、歯列矯正と合わせて手術を伴う治療になります。まず術前矯正として矯正専門医院で歯並びを改善し、提携する医療機関(当院の場合は広島赤十字原爆病院)で顎切手術をします。10日前後の入院が必要になります。その後は良い噛み合わせを構築する仕上げとして術後矯正を数ヶ月行い終了です。
ご自身の矯正治療が保険適用か否かは、精密検査をふまえて診断します。

上:治療前 中:手術前 下:術後・矯正治療終了20140809111703

カラーゴムで矯正治療を楽しもう!

全部の歯が大人の歯になる中学生以降は主に『マルチブラケット』と呼ばれる装置で治していきます。これはまず“ブラケット”と呼ばれる約3ミリの四角い装置を歯につけた後、ブラケットに針金を数珠状に通して歯並びをキレイに整えていきます。一昔前は銀色のブラケットでしたが近年は目立たない透明なタイプが主流となっており、更にワイヤーを固定するためのキャップがブラケットへ付いたことにより、従来のキャップなしのブラケットに比べて摩擦が少なく歯の移動をスムーズにしてくれています。当院ではそんな機能性と審美的にも優れたブラケットを使用しています。
調整のためにブラケットに輪ゴムをひっかける場合がありますが、この輪ゴムには様々なカラーがあるのはご存知でしょうか。最低でも1年間はつけるマルチブラケット装置ですが、目立たせたくない時には透明色の輪ゴムを、せっかくの治療を楽しみたい時はカラーゴムでいつもと違う雰囲気にチェンジしてオシャレを楽しんでみてはいかがでしょうか?およそ月に1回の定期検診がありますので、調整の際にゴムの交換を行います。季節やファッションにあわせて色を変えてみるのも素敵ですよ☆

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子どもの矯正装置(固定式)

前回は、子供の取り外し式の矯正器具、床装置のお話でした。今回は固定式装置についてです。「矯正」と言えば歯の表に付ける“ブラケット”を思い浮かべると思いますが、子ども治療でメジャーな固定装置は他にもあります。その中の一つ、“リンガルアーチ”についてご紹介します。
リンガルアーチは歯の裏側につける装置です。主に6才臼歯と呼ばれる奥歯に“バンド”と呼ぶ薄い金属をかぶせて、これを固定源にします。このバンドに針金をつけて、お口の状態を改善していきます。前歯にガタガタがあったり、あごの幅が狭すぎる場合に用います。子供の成長の自然なメカニズムを利用して、あごのバランスを良くしていくわけです。成長を利用するので痛みも通常ほとんどありません。歯の変化はあせらずに数ヶ月単位の長い目でみていく必要があります。
固定式の装置なので、自分では取り外す事は出来ません。毎回の定期検診で針金を適宜調節します。歯ブラシももちろん出来ますが、磨き方の指導を受けて丁寧にブラッシングする事が大切ですね。

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子どもの矯正装置(床装置)

矯正装置は床(しょう)装置と呼ばれる取り外すタイプと固定するタイプがありますが、今回は床装置について少しご紹介します。
主に乳歯と永久歯が混ざっている時期に使います。この時期は体も大きくなる成長期ですから、成長を利用して口の周囲の骨格をより望ましい方向に導きます。中学生になると大人の骨格に近づきますから、床装置で改善できるのは主に小学生の治療といえますね。
下アゴの成長を促して出っ歯を改善する、逆に上アゴの成長を促して受け口を改善する、ガタガタな状態をよくするためにアゴを拡げて歯が並ぶスペースを確保する、形を整えるなど目的に応じて形も違ってきます。歯並びをキレイに並べ、良い噛み合わせにする為には、歯だけの問題ではなくバランスのとれた骨格が大切です。

歯の生えかわりの時期にガタガタが出るケースもあるので、子どもの治療は実年齢ではなく、永久歯がはえ揃う時期を当院では早期治療の区切りとしています。
矯正治療中の子供さんも多くなっていますから、治療中のお友達の話しを聞いて励みにしてもいいかもしれませんね。

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治療終了した患者さんの声

今回は矯正治療が一段落し、装置が外れた方のアンケートを基に書いていきます。現在治療を頑張っている方、治療スタートを迷われている方の参考になれば幸いです。
まず、治療を始める前に不安に感じていたこと…抜歯の痛み、見た目の悪さ。小さい頃に乳歯を歯医者さんで抜いたことのある人は特に痛かった記憶がよみがえって不安に感じますよね。そして、何より気になるのが見た目。装置が気になって人前で笑いにくくなるのでは…歯磨きが難しくなるのでは…など、多くの不安が出てきます。しかし、いざスタートすると、抜歯の痛みはその時だけなので問題無し、装置もそんなに目立たなく感じたそうです。近頃では、テレビに出ている芸能人、街で偶然すれ違った人などが矯正をしているのを多く見かけるようになりました。そういった日常生活の中でも、あの人も頑張っているから私も!と、モチベーションが上がるきっかけがたくさんありますね。

もしも装置にトラブルがあった時には診療日であればご予約日以外でも対応しておりますのでご安心下さい。

今月治療を終えた患者様(30代女性)「キレイな歯並びはとても気持ちが良い!歯並びをあきらめずに治療を続けて、きれいな口元に自信をもってください」とこれから治療を始める方に向けて励ましのメッセージをいただきました☆

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子どもの矯正治療

学校検診で「歯並びやかみ合わせ 要相談」の通知をうけ、改めて子供さんの歯並びと向き合うご家庭も多いと思います。いつからでも始められる矯正治療ですが、小学生の低学年から早期治療を始めるのもおすすめです。まだ乳歯がたくさん残っている段階からスタートして、かみ合わせやあごの大きさや形をコントロールしていきます。
矯正歯科では、歯だけでなく骨格等も精密に検査をして詳しく分析します。そこから浮かび上がる将来の問題点に矯正治療によってアプローチします。治療方法は個々によって様々ですが、床装置とよばれる取り外し式の装置や、口の内側にワイヤーを取り付けるタイプの装置等を使います。矯正治療第一ステップの早期治療は、子どもの成長期を利用してより良いあごのバランスに近づけたり、今後起こりえる問題の悪化予防など、この時期にしかできない期間限定の治療といえるでしょう。
通院や装置を使う事など少し煩わしいこともありますが、未来のすてきな歯並びを楽しみにハッピーな矯正ライフを送れたらいいですね。

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