歯根吸収とは、歯根が何らかの原因で溶けてしまう現象のことであり、永久歯に生え変わる時に乳歯が溶ける生理的吸収、外傷に伴う外部吸収(しばしば根の癒着)、歯髄の問題で起こる内部吸収、矯正治療が影響するものがあります。その中でも今回は、矯正治療の影響についてお話します。
歯科矯正では、矯正装置により持続的な力を加え歯を移動させます。原因は完全には解明されていませんが、無理な力をかけたり、繰り返し揺らすような動きを行うことで歯根吸収が起こりやすいと言われています。その他にも、元々歯根吸収が起こりやすい体質、歯根形態、咬合様式(開咬)などもあるとされています。
矯正治療による歯根吸収は特徴的で、本来は尖っている根っこの先が丸くなってなってしまうことが多いです。軽度の場合には生活に支障はありませんが、高度に進行した場合には、歯の動揺や脱落、虫歯や歯周病になった時にリスクが高まります。矯正治療中に、そういった症状が見られた際には、まず3ヶ月程度歯を動かす処置を停止し、その後動かし方を半分程度に下げ、少しずつ治療を再開していきます。歯科矯正をする場合、個人差はありますが歯根の吸収というリスクは避けられないと言われており、起こった時に適切な対処をすることで、大きな問題にならないように気をつけます。
ののやま矯正歯科医院
月別アーカイブ: 2018年9月
食育と歯
最近よく耳にする「食育」という言葉。食育とは、食に関心を持ち、食を通して人間として生きる力を身につけることを言います。今日は食育と歯科の関係をお話しします。
歯科の領域では「噛む」ということが深く関係してきます。一口に噛む回数は30〜50回が理想的。よく噛むことで食べ物がよりしっかりと粉砕されるだけでなく、消化酵素を含む唾液が多く分泌されよく混ざることによって胃腸での消化吸収が助けられます。他にも唾液には自浄作用といって歯に汚れをつきにくくしてくれる働きや、発がん性物質の働きを抑える酵素が含まれています。そして、噛んだ刺激は脳の広範囲に伝わり将来的に認知症予防へと繋がります。
あまり噛まない「早食い」「丸飲み」はメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の原因に挙げられます。
「食」は「口」から始まります。「食」を通して身体の健康だけでなく、噛むことによって食感を楽しみ、舌で味を感じることによって心の健康も獲得できる「食育」を考えてみましょう。
知っていますか?TCH(歯列接触癖)
皆さんはTCH(歯列接触癖)を知っていますか?TCHとは”Tooth Contacting Habit”の略で、上下の歯を”持続的に”接触させる癖のことです。この癖は、筋肉の緊張や疲労を引き起こします。筋肉の緊張や疲労と聞くと「食いしばり」や「噛み締め」を思い浮かべる方が多いと思いますが、上下の歯を接触させる程度であってもこれらの症状を引き起こすのです。
そもそも人間は何もしていない時には上下の歯は接触しておらず、会話や食事をするときを含めても接触している時間は1日20分程度が正常と言われています。上下の歯の接触時間が増えるとそれだけ顎関節への負担も増えていきます。
TCHはテレビを見ている時やパソコンをしている時など無意識の時に起こりやすいので、テレビやパソコンの隅に付箋やシールを貼っておいて、それをみた時に歯が接触していないかどうか確認し、もし接触していたら離すようにすると良いでしょう。
キシリトール
皆さんはキシリトールを知っていますか?ガムやタブレットのCMなどでよく耳にすると思いますが、今日はキシリトールについて詳しくお話しします。
キシリトールは、虫歯の原因となるプラーク(歯垢)を作り出さない「糖アルコール」という甘味料の一つで、野菜や果物の中にも含まれる天然の成分です。糖アルコールには他にも、マルチトール・ソルビトール・ラクチトールなどがありますが、キシリトールには虫歯の原因にならないだけでなく、歯を強くし、虫歯の発生を防ぐ予防の効果もあります。まずキシリトールは虫歯の原因となるミュータンス菌の増殖を防ぎ、プラーク(歯垢)の付着性を減少させます。また、歯の脱灰(歯が酸によって溶け出すこと)を防ぎ、歯の再石灰化を促進させます。
市販のキシリトールガムは甘味料としてキシリトールを50%以上使用していますが、その他に人工甘味料が含まれているので注意が必要です。一方、歯科専用のキシリトールガムは甘味料としてキシリトールを100%使用しています。歯科専用でもキシリトールの効果を得るためには「1回2粒を1日に3、4回」を目安に食べる必要があります。キシリトールを上手に利用して歯を強くしていきましょう。