受け口は遺伝?

受け口は遺伝か?を語るのに有名なエピソードがあります。中世ヨーロッパに君臨したパプスブルグ家の肖像画には何代もに渡って受け口の人物が描かれているのです。これは歯並びと遺伝の関係を示す貴重な資料とされています。
受け口は、歯が生える位置や角度に問題のある「歯槽性の受け口」と、下顎が上顎に比べアンバランスに大きい「骨格性の受け口」に分類されます。骨格性の受け口の場合には遺伝的な要素があると考えられています。しかし受け口の問題は遺伝だけでなく下の歯を押すような舌位も関係しています。
一般的に受け口の治療開始は他のケースに比べ早い時期が望ましいとされています。しかし遺伝的、骨格的な要素が強い場合には早期治療をしてもそれを覆すほどの強力な下顎の成長を示す事もあり、その見極めは多角的な分析のもと慎重に行われます。
基本的にはどの程度の受け口でも様々な治療法によって自然な横顔とキレイな歯並びにする事が可能です。症例は後日ご紹介します。

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日本矯正歯科学会に参加しています

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院長の野々山大介です。10月20〜22日は日本矯正歯科学会の学術大会に参加しています。今年は、スタディークラブの先生との共同研究について、いくつかのセミナー、学会で発表してきましたが、今回が締めくくりです。発表内容は難しいことを端折りますと、ダイナミックに変化させる外科矯正治療では、顎関節は無視できないよ と至極当たり前なことでした。矯正歯科業界全体を見ますと、顎関節の問題に積極的に取り組んでいる先生は少ないのが現状です。特に難易度の高い外科矯正治療で良い成績を残すには、少しでも精度の高い顎関節アプローチが必要です。私自身も現在の治療スタイルになる前は、どこの矯正の先生もやっているオーソドックスな方法で治療を行っていました。手術時には咬めていた筈の咬合が退院した途端、完全に咬めなくなっているケースがとても多く、無理矢理、顎間ゴムで締めまくっていました。当然、そのようなケースでは、なんとかカムフラージュするので精一杯です。今では、どの部分に問題が出てきているのか明確になり、安定性、予知性が格段にあがりました。もちろん、どうしようもなく困難なケースはあるのですが、確実な結果を得られるケースの方が多くなった事は、患者さんにとっても、僕にとっても幸せな事です

いろいろな矯正 開咬(かいこう)

奥歯を噛み合わせた時に、前歯が噛み合ず上下の歯が開いた状態を開咬といいます。このタイプの噛み合わせでは前歯で物を噛み切れないため、固い食べ物が苦手な人が多いです。その他の症状としては唇が閉じにくいため口の中が乾きやすいことや、口が乾くのでだ液が行き渡らず虫歯や歯周病の原因になること、そして噛み合わせが安定しないため顎関節症も心配です。
口呼吸、舌を出すクセ、指しゃぶり、顎の関節の問題 などが開咬の成り立ちに関わっている事が多いです。そのため、矯正の装置による治療と並行して呼吸の仕方や舌の位置へのアプローチ・舌の筋力トレーニングが必要かもしれません。
この写真のケースは成人の方でしたので、2年程の期間マルチブラッケット装置をつけ治療しました。開咬の治療ではそもそも咬合力も小さいため、抜歯という方法は治療方針に入る可能性が高いです。骨のズレに起因している場合は、軽度であれば歯を動かすことで対処しますが、程度に応じて外科矯正の併用を検討するべきでしょう。歯科矯正治療においては、より良い噛み合わせを達成するために、顎の関節・骨・筋肉などの調和を考慮する必要があります。

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歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療

本格矯正はマルチブラケットと呼ばれるワイヤーの矯正装置で歯を動かします。奥の歯を固定源として動かすような一般的な方法です。歯の移動量の大きさによってはマルチブラケットだけでなくヘッドギアやゴムをオプションの装置として使います。
しかし、これらのオプションの装置にも課題があります。多くは取り外し式なので患者様本人の忘れずに継続する努力が必要なこと、帽子の様にかぶる装置は「見た目」が気になり使用時間が自宅滞在中に限られてしまうことなどでした。そこで現在注目されているのが24時間効果を発揮できる固定式のオプション装置「歯科矯正用アンカースクリュー」です。以前は矯正用インプラント、TADなどと呼ばれていましたが、薬事承認とともに「歯科矯正用アンカースクリュー」が正式名称となりました。
歯科矯正用アンカースクリューから他の部品へゴムやワイヤーなどを引っかけるなどして組み合わせて利用します。他のオプション装置と比較しても見た目や煩わしさは改善されています。装着は部分麻酔後に歯肉にねじ込みます。失った歯を補うために立てる「補綴用インプラント」とは違いますので、矯正治療が終われば全て取り外します。麻酔無しで外す事が可能で患者さんの負担も少なくて済みますね。

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