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乳歯の早期脱落の影響

乳歯が虫歯やケガのため早く抜けたり、1本の大きな永久歯が狭い所に生えてきたため隣の乳歯が早期に抜けてしまう場合があります。
抜けてしまうと一時的にすき間があるように見えますが、隣の歯が寄ってきますので、本来その場所に生えてくるはずの永久歯のスペースがなくなってしまっています。そうすると将来その位置に生えてくる歯がはみ出したり、その歯が骨の中で挟まって動けなく(萌出できなく)なる可能性があります。また、乳歯に限らず抜けた歯を放置しておくと、隣の歯への影響だけでなく噛み合わせの相手の歯(上下)が不必要に伸び出してくることがあります。
 矯正治療では歯の交換終了まではスペースを維持し続ける方法があります。抜けた所だけ部分的に装置を付けて隣の歯が寄ってこないようにしたり、子供の場合には脱落部位だけでなく全体的にみて、今後他の永久歯もきれいに生える余地が無いようであれば積極的にあごの大きさを整えていくことも検討する必要があるでしょう。

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八重歯の症例

”犬歯”と呼ばれる真ん中から3番目の歯がスペース不足のため、はみ出して生えている状態を一般的に八重歯と呼びます。正しくは「叢生(そうせい)」と言います。
 犬歯は動物でいえばキバにあたる太くて丈夫な歯なので、本来はかみ合せのキーとなり他の歯の過大な負担を軽くする役割があります。しかし犬歯が飛び出してかみ合わせに参加していないのは、チームの主力メンバーが欠けている様な状態で、歯の長期性を考えると不安材料となる事があります。気になる症状としては、食事や会話中に上の唇に歯がひっかかって傷になったり、歯ブラシが届きづらいため虫歯や歯周病になりやすい事があげられます。ガタガタが強いと、歯をきれいに並べた後に隠れていた虫歯が見えてくることがあります。歯並びを整えるのと同時に虫歯の治療や予防にも力をいれましょう。
 こちらのケースは「重度叢生」などの問題がある成人です。治療期間は約2年で、小臼歯の便宜抜歯をしてマルチブラケット装置と歯科矯正用アンカースクリューを使って治療を行いました。歯並び、噛み合わせ、歯肉などいずれも改善し、動的治療を終了して2年経っても良好な安定性を確認できました。

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矯正治療 抜歯・非抜歯の選択

 矯正治療はしてみたい、でも歯を抜くんでしょ?これはよくあるご質問です。ここまで大切にしてきた歯を抜きたくないのは当然の気持ちです。もちろん矯正歯科医も「いい歯並びにして一生自分の歯を使ってもらいたい」と考えて矯正治療に取り組んでいるわけですから、全く同じ気持ちです。しかし、並ぶスペースがないからこそガタガタになっているわけで、何もせずにキレイな歯並びにするっていうのも少し無理があります。そこで抜かない矯正の有効な手段として、子供からの矯正が考えられます。歯を小さくすることは出来ませんが、歯を支えるあごを大きくすることは成長期の子供さんなら個人差もありますが可能です。もちろん顔全体のバランスが良くなる方向で治療をします。
 しかし成長を利用した治療ですので限界もあります。本格矯正で歯を抜くことが絶対無いとはいえません。他にも様々なアプローチがありますから、良いかみ合わせにするために最大限の努力をします。それでもやむを得ない時の最終手段だとご理解下さい。

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反対咬合症例

 「受け口」正しくは「反対咬合」と言います。これはかみ合わせた時に下の歯が上の歯より前にある歯並びの事。原因は遺伝や舌のクセなど様々な要素があるといわれています。前歯で物が噛み切れなかったり、発音(特にさ行やた行)が不明瞭になりやすいなどのマイナス面が指摘されますが、口元や輪郭の「見た目」が気になると言われる方もいます。
 このケースは「歯槽性下顎前突」などの問題点を抱えた子供さんです。かみ合わせのズレを取り除き、干渉している前歯のかみ合わせと歯並びを改善しました。小学生の間の骨の成長をコントロールする事によって、自然なバランスの噛み合わせと口元が実現しました。
  下顎前突の場合には身長がぐっと伸びる中高生の成長期に問題が起こってくることもあるので、継続してコンピューターで骨格を分析調査したり成長予測をしたりと、長期間慎重に管理をする必要があることも多いです。

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歯の記念日「いい歯の日」

11月8日は「いい歯の日」です。お子さんの顔は毎日見ていても口の中をじっくり見る事って意外と少ないのでは?時にはじっくりお口の中をのぞいてみてみましょう。専門の知識がなくても大丈夫。じっくり観察すれば見えてくることはたくさんあります。
まず大きく口を開けて上下の歯並びを見てみましょう。乳歯の交換状況はどうなのか、何本大人の歯に生え変わっているのか、前歯で物を噛みちぎることはできているか、どこか1本だけ飛び出して生えている歯はないですか?
次はしっかり奥歯を噛み合わせた状態で“いー”と唇を横にひっぱってみてください。正面から見て、横から見て、何か気になることはないですか。特に小学生は歯が交換している時期ですから、痛い歯はないか、しゃべったり噛んだりするのが難しくないかも聞いてみてください。

「いい歯の日」、お口や歯について、ご家族で改めて話し合うきっかけにしてほしいですね。そして気になる症状・状態があれば早めに専門機関に受診しましょう。

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受け口は遺伝?

受け口は遺伝か?を語るのに有名なエピソードがあります。中世ヨーロッパに君臨したパプスブルグ家の肖像画には何代もに渡って受け口の人物が描かれているのです。これは歯並びと遺伝の関係を示す貴重な資料とされています。
受け口は、歯が生える位置や角度に問題のある「歯槽性の受け口」と、下顎が上顎に比べアンバランスに大きい「骨格性の受け口」に分類されます。骨格性の受け口の場合には遺伝的な要素があると考えられています。しかし受け口の問題は遺伝だけでなく下の歯を押すような舌位も関係しています。
一般的に受け口の治療開始は他のケースに比べ早い時期が望ましいとされています。しかし遺伝的、骨格的な要素が強い場合には早期治療をしてもそれを覆すほどの強力な下顎の成長を示す事もあり、その見極めは多角的な分析のもと慎重に行われます。
基本的にはどの程度の受け口でも様々な治療法によって自然な横顔とキレイな歯並びにする事が可能です。症例は後日ご紹介します。

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日本矯正歯科学会に参加しています

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院長の野々山大介です。10月20〜22日は日本矯正歯科学会の学術大会に参加しています。今年は、スタディークラブの先生との共同研究について、いくつかのセミナー、学会で発表してきましたが、今回が締めくくりです。発表内容は難しいことを端折りますと、ダイナミックに変化させる外科矯正治療では、顎関節は無視できないよ と至極当たり前なことでした。矯正歯科業界全体を見ますと、顎関節の問題に積極的に取り組んでいる先生は少ないのが現状です。特に難易度の高い外科矯正治療で良い成績を残すには、少しでも精度の高い顎関節アプローチが必要です。私自身も現在の治療スタイルになる前は、どこの矯正の先生もやっているオーソドックスな方法で治療を行っていました。手術時には咬めていた筈の咬合が退院した途端、完全に咬めなくなっているケースがとても多く、無理矢理、顎間ゴムで締めまくっていました。当然、そのようなケースでは、なんとかカムフラージュするので精一杯です。今では、どの部分に問題が出てきているのか明確になり、安定性、予知性が格段にあがりました。もちろん、どうしようもなく困難なケースはあるのですが、確実な結果を得られるケースの方が多くなった事は、患者さんにとっても、僕にとっても幸せな事です

いろいろな矯正 開咬(かいこう)

奥歯を噛み合わせた時に、前歯が噛み合ず上下の歯が開いた状態を開咬といいます。このタイプの噛み合わせでは前歯で物を噛み切れないため、固い食べ物が苦手な人が多いです。その他の症状としては唇が閉じにくいため口の中が乾きやすいことや、口が乾くのでだ液が行き渡らず虫歯や歯周病の原因になること、そして噛み合わせが安定しないため顎関節症も心配です。
口呼吸、舌を出すクセ、指しゃぶり、顎の関節の問題 などが開咬の成り立ちに関わっている事が多いです。そのため、矯正の装置による治療と並行して呼吸の仕方や舌の位置へのアプローチ・舌の筋力トレーニングが必要かもしれません。
この写真のケースは成人の方でしたので、2年程の期間マルチブラッケット装置をつけ治療しました。開咬の治療ではそもそも咬合力も小さいため、抜歯という方法は治療方針に入る可能性が高いです。骨のズレに起因している場合は、軽度であれば歯を動かすことで対処しますが、程度に応じて外科矯正の併用を検討するべきでしょう。歯科矯正治療においては、より良い噛み合わせを達成するために、顎の関節・骨・筋肉などの調和を考慮する必要があります。

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歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療

本格矯正はマルチブラケットと呼ばれるワイヤーの矯正装置で歯を動かします。奥の歯を固定源として動かすような一般的な方法です。歯の移動量の大きさによってはマルチブラケットだけでなくヘッドギアやゴムをオプションの装置として使います。
しかし、これらのオプションの装置にも課題があります。多くは取り外し式なので患者様本人の忘れずに継続する努力が必要なこと、帽子の様にかぶる装置は「見た目」が気になり使用時間が自宅滞在中に限られてしまうことなどでした。そこで現在注目されているのが24時間効果を発揮できる固定式のオプション装置「歯科矯正用アンカースクリュー」です。以前は矯正用インプラント、TADなどと呼ばれていましたが、薬事承認とともに「歯科矯正用アンカースクリュー」が正式名称となりました。
歯科矯正用アンカースクリューから他の部品へゴムやワイヤーなどを引っかけるなどして組み合わせて利用します。他のオプション装置と比較しても見た目や煩わしさは改善されています。装着は部分麻酔後に歯肉にねじ込みます。失った歯を補うために立てる「補綴用インプラント」とは違いますので、矯正治療が終われば全て取り外します。麻酔無しで外す事が可能で患者さんの負担も少なくて済みますね。

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噛むことと顎の発達

噛み合わせと健康は密接に関係していると言われています。近年は、噛み合わせが体に及ぼしている影響が科学的に証明されつつあり、皆さんも様々な記事を目にしたことがあるかもしれません。
「よく噛んで食べなさい」と言われた経験がある方も多いでしょう。噛むことは、顎の健全な発達を促しますし、自分の歯でしっかり噛む刺激が唾液を出し、脳細胞を活性化することにつながります。顎(骨)がしっかり発達してないと、生えてくる歯のサイズと顎との大きさのアンバランスを招き、スペースの無い場所には歯は並びきることができないため、ガタガタの歯並びになります。しかし一方では、噛み合わせの良くない状態で無理に「しっかり噛む」ことを続けると、顎の関節や歯自体にダメージを与えることもあります。つまり、しっかり噛む必要が無い生活が、良くない歯並びや噛み合わせを生む循環もあるのです。
現代の日本の食生活は、美味しくて噛む負担の少ない柔らかい食べ物へと変化を遂げてきたわけですから、良くない噛み合わせ(不正咬合)は個人の問題というよりも時代の変化がもたらした現代病とも考えられるかもしれませんね。

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